Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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心理学基礎文献研究 I 岡本 潤子
必修  2単位
【心理】 17-1-1360-3763-08

1. 授業の概要(ねらい)

 犯罪行為に対する処罰の判断と行使とを国家に付託するのは,社会の秩序を維持するための仕組みだったはずです。被害者は,自身の被害を申告し,被疑者が正当な判断により妥当な処罰を受けることを期待します。被害者は,被疑者の処罰について,直接手を下す必要もなく,また,その権利もありません。そして,自身の受けた被害については,別途民事手続きによって損害の回復を図ります。
 様々な要因により,この仕組みに対する不満が声高に言われるようになっています。特に,公開の法廷で審理される成人の事件と異なり,非公開で行われる未成年の犯罪行為を扱う家庭裁判所の審理では,被害者の権利よりも被疑少年の権利の方が守られている,というような主張も聞かれます。
 しかし,被害者と犯罪者の思いは,果たして,永遠に平行線をたどるのでしょうか。被害者と犯罪者との対話によって,解決されるものはないでしょうか。
 授業では,修復的司法についての研究者と,各現場の専門家たちによるテキストを丁寧に読み進め,社会における犯罪・非行についても考えていきます。具体的には,班別に担当箇所を分担して発表し,討論の司会もしていきます。

2.
授業の到達目標

 ① 修復的司法の意味・意義について理解し,説明することができる。
 ② 修復的司法の実践について学び,現状の利点と限界について説明できる。
 ③ 調べたことやまとめたことを,適切に発表し,また,関心を持って討論に参加できる。
 ④ テキストの内容や討論を生かし,自分なりに考え,意見を形成できる。

3.
成績評価の方法および基準

 授業への参加状況(振り返りシートの提出と内容,討論への参加の状況)(40%),発表担当のときの資料及び発表の内容(30%),レポート(30%)を総合的に評価します。

4.
教科書・参考書

 藤岡淳子編『被害者と加害者の対話による回復を求めて』誠信書房

5.
準備学修の内容

 発表者であるか否かに関わらず,事前にテキストを読み,自分なりの問いを立てて授業に臨んでください。
 発表の準備は,班ごとに工夫して行いますが,時間外に行う必要があります。

6.
その他履修上の注意事項

 テキストはいわゆる入門書ではないので,これまでに犯罪や非行についての授業を履修していない人には,少し難しい内容です。テキストを読むスピードはあまり急がず,十分に解説を入れながら進めていく予定ですが,疑問点は進んで調べ,また,質問をするなどの,積極的な参加を期待します。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 イントロダクション。発表の分担決めなど。
【第2回】
 犯罪手続きの流れ,基本的法律や処罰の種類などについての授業
【第3回】
 発表と討論① 第1章 犯罪をめぐる「体験」について考える
【第4回】
 発表と討論② 第2章 修復的司法とは
【第5回】
 まとめと討論
【第6回】
 発表と討論③ 第3章 被害者加害者対話とは
【第7回】
 発表と討論④ 第4章 当事者はVOMについてどう考えるか(第1節)
【第8回】
 まとめと討論
【第9回】
 発表と討論⑤ 第4章 当事者はVOMについてどう考えるか(第2節)
【第10回】
 発表と討論⑥ 第5章 警察における修復的司法の現状と課題
【第11回】
 まとめと討論
【第12回】
 発表と討論⑦ 第6章 家庭裁判所における修復的司法の現状と課題 第1節前半
【第13回】
 発表と討論⑧ 第6章 家庭裁判所における修復的司法の現状と課題 第1節後半
【第14回】
 発表と討論⑨ 第6章 家庭裁判所における修復的司法の現状と課題 第2節
【第15回】
 春期全体のまとめ