図書館情報資源特論
担当者飯澤 文夫
単位・開講先選択  2単位 [資格科目]
科目ナンバリングLIH-304

授業の概要(ねらい)

 日本の書物の発生から江戸時代に至るまでを,材料,装訂の変遷,書写・印刷様式,出版と流通,来歴など書誌学的観点から学ぶ。
 特に,江戸時代のベストセラー小説『偐紫田舎源氏』『浮世風呂』,寺子屋の教科書『小野篁歌字盡』(漢字),『女大学』(女性の教養),『塵劫記』(数学),実用書の『都風俗化粧伝』(美容),『豆腐百珍』(料理),『切絵図』(住宅地図)といった書物を実際に手に取り,江戸が出版文化繚乱の時代であったことを知ると共に,くずし字にも慣れ,さらに,和綴じと木版刷りの実習を交えて古い時代の書物に親しみがもてるようにする。

授業の到達目標

 1)各種の装訂様式と変遷を社会状況,時代背景との関係で理解する。
 2)印刷本の初刷と後刷を見極める力を修得する。
 2)書物と読書について文化史的な関係を理解する。
 3)文化遺産としての古典籍の取扱いと保存管理の在り方を理解する。
 4)装訂については,中世と近世における代表的な裝訂を実習し,その技術を身に着ける。

成績評価の方法および基準

 毎授業におけるショートコメント(30%),小レポート及び授業中の課題発表(30%),最終試験(40%)により総合的に評価する。
 小レポートのテーマは,下記「5 準備学修の内容」2)を読んでの考察,又は,3)の訪問記とする。
 特段の理由なく授業回数(15回)のうち5回以上の欠席,指定期日までにレポートまたは課題を提出しない場合は最終評価の対象から除外する。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献『日本書誌学を学ぶ人のために』1998廣庭基介,長友千代治著世界思想社
参考文献『日本古典籍書誌学辞典』1999井上宗雄ほか編著岩波書店
参考文献『宮内庁資陵部書庫渉猟』2006櫛笥節男著おうふう
参考文献『書誌学談義江戸の板本』1995中野三敏著岩波書店
参考文献『和本のすすめ―江戸を読み解くために』2011(岩波新書)中野三敏著岩波書店
参考文献『図説江戸の学び』2006(ふくろうの本)市川寛明・石山秀和著河出書房新社
参考文献『紙の博物誌』1992渡辺勝二郎著出版ニュース社

準備学修の内容

 1)第3-5回「江戸時代のベストセラーを読む」は,江戸時代の書物(くずし字)を数行づつ読んでもらう。しっかり予習してくること。
 2)毎授業でMELICに所蔵する関連図書を紹介するので,目をとおしておくこと。
 3)国文学研究資料館(立川市,多摩都市モノレール高松駅・徒歩10分http://www.nijl.ac.jp/),紙の博物館(北区,R京浜東北線・王子駅南口徒歩5分, http://www.papermuseum.jp/),その他関係機関のホームページ閲覧,訪問,常設展示観覧,図書室を利用するなどして優れた古典籍や書写材料としての和紙を目にする機会を作るよう心がけて欲しい。
 4) 毎回授業冒頭で,本や図書館,書店など本が登場する本(小説やコミックを含む)を「私の一冊」として,履修者からクラスメートに紹介する時間を設ける。積極的にエントリーしてください。

その他履修上の注意事項

 1)第1回目の授業では授業の進め方,成績評価方法について説明するので必ず出席すること。
 2)参加型授業とするために,毎回,講義とディスカッション・発表,実習を交えて行う。ディスカッションには積極的に参加すること。
 3)インターネットの活用ができること,WORD・EXCELで文書等の作成ができること,Web File Serverを使用(授業資料のダウンロード,レポート等のアップロード)することができること,を最低条件とする。
 4)授業に関する連絡手段としてメーリングリストを作成する。履修確定後速やかに登録すること。

授業内容

授業内容
第1回 イントロダクション(何を学ぶのか,授業の進め方,成績評価方法など)
 書誌学の概念,語源
第2回 製本実習(粘葉装,綴葉装,袋綴)
第3回 江戸時代の子供たちの勉学,読書-江戸時代のベストセラーを読む(1)
第4回 江戸時代の子供たちの勉学,読書-江戸時代のベストセラーを読む(2)
第5回 江戸庶民の生活-江戸時代のベストセラーを読む(3)
 江戸時代の書物-往来物,戯作,名所図会,絵図,武鑑-
第6回 古書の保存と取扱法
第7回 書物の装訂(1)糊装-巻子本から粘葉装まで-
第8回 書物の装訂(2)線装-綴葉装から袋綴,現代装訂まで-
第9回 書物の装訂(3)体裁-各部位の名称と役割-
第10回 書物の種類(1)写本―伝聖徳太子『法華義疏』,松尾芭蕉『奥の細道』-
第11回 書物の種類(2)刊本―『百万塔陀羅尼』以後の歴史と製法-
      (3)活字版―きりしたん版から近代活版印刷まで-
第12回 整版(木版)印刷実習
第13回 書写材料(1)和紙-紙漉き法,種類と特色-
第14回 書写材料(2)墨,染料,その他
第15回 最終試験
 試験問題の解説とまとめ
 *授業計画は学習進捗状況によって変更することがある。