担当者 | 中谷 直司教員紹介 | |
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単位・開講先 | 選択 2単位 [社会学科] | |
科目ナンバリング | HIT-102 |
本授業は、「近代」(ヨーロッパ史基準で大体17世紀~現在)の社会関係を根底で支えるの基本的な考え方を、歴史的な展開を軸にして理解することを目的とする。
社会契約論とは、社会秩序(ルール)はすでに存在する価値観(伝統)の反映でも権力者からの強制でもなく、各個人の自由意志にもとづいてできあがっている(できあがるべき)との議論である。
一方で歴史理解としての社会契約論はフィクション(でっち上げ)である。実際に人類の大多数にとって、社会契約論の論理構成は不自然(非伝統的)である。しかし他方で、個人の自由意思を共通の出発点とした社会契約論は、私たちが生きる自由で豊かな社会を現実のものとする原動力の一つである。社会契約論を知らずとも、すでに存在する「近代」社会をあなたが生きるのに何の問題もない(大学で勉強する多くの学問分野がそうであるように)。しかし社会契約論なくして、あなたが生きる「近代」社会は生き延びられないのである(と、やや大袈裟に言っておく)。
直観や伝統に反する「思想」が我々の豊かな社会を可能にする。「近代」社会は、このような逆説で溢れているが、社会契約論もその一例である。社会契約論の史的理解を通じて、我々の社会の特徴を考察するための有用な視点を新たに一つ、みなさんの頭のなかに追加するのが、本授業の狙いである。
本授業は反転授業で行われる。基本的に毎回,教科書の該当箇所に基づく簡単な読書メモを提出してもらい,対応した簡単な小テストを授業冒頭で行う(そのまま期末試験の予習になる)。その上で担当者が章テストの内容を中心に講義する。また複数回のグループディスカッションを実施する。
難易度の低いものから順に:
(1)社会契約論の基本的な論理構成を他の受講生に説明できるようになる。
(2)社会契約論の枠組を用いて、近代社会の特質を自ら考察し、他の受講生と議論できるようになる。
(3)社会契約論の枠組を用いて、現在の社会問題を自ら考察し、他の受講生できるようになる。
(4)社会契約論に関する教科書の著者や本授業担当者の議論を批判的に考察し、他の受講生と議論できるようになる。
(5)社会契約論の基本的な論理構成とその意義を、自らの考察を含めて、この授業を履修していない家族や友人に説明できるようになる。
授業内課題(読書メモの提出、小テストの解答、ディスカッションへの参加):40%
*単なる出席は加点対象としない。
期末試験:60%
*授業内の小テストおよびディスカッションにもとづいて出題する。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | 『社会契約論──ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ』 | 重田園江 | 筑摩書房 (ちくま新書) |
参考文献 | 『マキャベリからロールズまで──社会思想の歴史』 | 坂本達哉 | 名古屋大学出版会 |
・教科書の内、担当者が指示する箇所を読み、読書メモを持って毎回の授業に参加する。
・小テストとその解説講義およびディスカッションの内容を踏まえて、期末試験の準備をする。
・教科書を第2回の授業開始までに入手すること。
・同じ担当者の「社会思想史Ⅰ」を受講しておくと、授業内容の理解に便利である。ただし必須ではない。
・授業の進度や受講生の関心に応じて、内容を一部調整する場合がある。
回 | 授業内容 |
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第1回 | イントロダクション──授業の進め方と狙いの説明;教科書の説明 |
第2回 | なぜ社会契約論なのか──背景知識の説明 |
第3回 | ホッブズの社会契約論1──ホッブズの問題意識 |
第4回 | ホッブズの社会契約論2──リヴァイアサンとホッブズ問題 |
第5回 | ホッブズの社会契約論3──約束とホッブズの社会契約論 |
第6回 | ヒューム1──ヒュームの問題意識 |
第7回 | ヒューム2──ホッブズ問題へのヒュームの対応 |
第8回 | ヒューム3──約束とヒュームの社会契約論 |
第9回 | ルソー1──ルソーの問題意識 |
第10回 | ルソー2──なぜ人類は社会契約を必要としたか |
第11回 | ルソー3──一般意志と特殊意志 |
第12回 | ロールズ1──ロールズの問題意識 |
第13回 | ロールズ2──2つの正義の原理 |
第14回 | ロールズ3──ロールズとルソー |
第15回 | 授業の総括 |