社会思想史Ⅰ
担当者中谷 直司教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [社会学科]
科目ナンバリングHIT-101

授業の概要(ねらい)

 本講義では「近代社会」を支える代表的な思想の系譜を歴史的に解説する。ここでいう「近代社会」とは、元来は西ヨーロッパ発祥のローカルな社会システムでありながら、500年かけて日本を含む地球各地の人間共同体に徐々に伝播してきた(そしてまだその過程にある)経済および政治・法システムのことであり、「法の支配」と「市場経済」を一般的な基盤とする。

 以上にいう「近代社会」は、科学技術の発展と相まって、掛け値無しに人類史上で空前の繁栄と自由を「個人」および「社会」にもたらした。だが同時に、新たな経済的・社会的・政治的な問題を引き起こした。近代の社会思想とは、一方でこのような素晴らしい社会システムを可能にし、あるいはその正当性を強力に擁護する思想の総称である。同時に他方では、素晴らしき社会システムが抱える問題・課題を批判的に検討し、その改善や克服をめざす思想の総称でもある。

 授業では500年の間に登場し、大きな影響力を持った代表的な思想家に焦点をあわせて、以上の意味での社会思想の展開と変遷を辿る。その結果として、いまのところ、500年前に始まった近代という時代の先端(もしくは一番後ろ)に位置する我らが現代社会の特徴と課題を、より長期的な視野から理解することを目ざす。

 授業は参考書としてあげた坂本『社会思想の歴史』(2014)をベースに行う。授業中に読み上げたり、直接参照を指示したりはしないが(よって教科書ではなく参考書とした)、深い理解を必要とする受講生はぜひ入手してほしい。また担当者による講義内容を踏まえた、クラス内ディスカッションの時間を確保したい。

授業の到達目標

難易度の低いものから順に:
(1)近代社会を対象とする代表的な社会思想の基本的な内容を理解する。
(2)代表的な社会思想の背景となった時代状況を理解する。
(3)代表的な社会思想間の継承関係と相互作用を理解する。
(4)500年にわたる社会思想の展開と変遷を踏まえて、現在に至る近代社会の基本的な特徴を、この授業を履修していない家族や友人に説明できるようになる。

成績評価の方法および基準

・授業参加20%:毎回コメントペーパーを提出してもらう。単なる出席は加点対象としない。
・ブックレポート30%:授業で習得する社会思想の知識を踏まえながら,関連文献の要約(ポイントの解説)と,その内容についての考察を行ってもらう。新書中心の課題文献リストを授業開始後に配付する。
・期末試験50%:暗記能力ではなく,授業で解説した社会思想から得られる問題理解の方法を適切に理解しているかどうかを評価する。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献『社会思想の歴史──マキャベリからロールズまで』坂本達哉名古屋大学出版会

準備学修の内容

(1)配付資料を用いて復習する。
(2)授業内容を踏まえて、各自ブックレポートの作成を進める。分量はA4で2枚程度。
(新書中心の課題文献リストを授業開始後に配付する)

その他履修上の注意事項

(1)講義は配付する資料(レジュメ)を用いて行う。あわせて、関連するビデオ教材なども使用し、理解の促進を図る。
(2)講義では毎回コメントペーパーを配付し、授業に対する感想・質問を書いてもらう。質問については、2~3をピックアップし、次回の授業冒頭で回答する。
(3)受講生の関心に応じて、進度や内容を一部調整することがある。

授業内容

授業内容
第1回イントロダクション──授業の進め方と狙いの説明
第2回近代の社会思想──二つの視点
第3回近代の誕生1──マキャベリ
第4回近代の誕生2──宗教改革
第5回社会契約思想1──時代背景
第6回社会契約思想2──ホッブズとロック
第7回社会契約思想3──ルソーの人民主権論
第8回経済学成立の衝撃──スミスの問題関心と思想
第9回近代自由主義とその批判者たち1──バーク、ヘーゲル、マルクス
第10回近代自由主義をアップデートする1──J・S・ミル
第11回近代自由主義をアップデートする2──ヴェーバー
第12回近代自由主義をアップデートする2──ケインズとハイエク
第13回現代の「自由主義」1──社会主義との競争
第14回現代の「自由主義」2──ロールズの正義論
第15回講義の総括