グローバル社会論Ⅱ
担当者中谷 直司教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [社会学科]
科目ナンバリングSOC-312

授業の概要(ねらい)

 本授業のテーマは、国際社会(International Community; Global Community)における「安全保障」である。安全保障とは、一般的に「ある大事な何か」を、何らかの手段を用いて、守る営みである。何から守るのかというと、その「大事な何か」の価値を傷つける・奪うもの(=脅威)から守るのである。

 伝統的に、国際社会における安全保障といえば、第一義的には国家の軍事的な防衛であった(経済的な手段も加味されるが)。だが大体第二次世界大戦を契機に、安全保障の概念に大きな変化が生じた。伝統的な安全保障観が想定する国家の軍事的安全保障だけでは、個々の人間の安全保障を必ずしも確保できないとの認識が広まったためである。たとえば、戦争突入前に始まっていたナチス・ドイツによるユダヤ人迫害や、あるいは戦争や内戦がなくとも、深刻な干ばつによって飢餓が発生しているアフリカの一部地域の状況を想像してみてほしい。結果、重視されるにいたったのが「人間の安全保障」である。

 本授業では以上に述べた二つの「安全保障」の基本的な概念を解説した上で、そららの相互作用を検討する。授業は大きく前半と後半に分かれ、まず新しい概念である「人間の安全保障」を、ついで伝統的な安全保障を扱う。両者の検討を通じて、国家を主役とするInternational Communityと、国境を越えた人類のネットワークからなるGlobal Communityのハイブリッドといえる現代国際社会の特徴理解を目ざす。

 本授業は反転授業で行われる。基本的に毎回,教科書(前半・後半で1冊ずつ)の該当箇所に基づく簡単な読書メモを提出してもらい,対応した簡単な小テストを授業冒頭で行う(そのまま期末試験の予習になる)。その上で担当者が小テストの内容を中心に講義する。また複数回のグループディスカッションを実施する。

授業の到達目標

難易度の低いものから順に:
(1)2つの国際安全保障観の基本的な内容を他の受講生に説明できる。
(2)国際社会がかかえる安全保障問題について、二つの安全保障観をもとに、他の受講生と議論できる。
(3)以上を踏まえて、現代国際社会の特徴について、歴史的な文脈の中で、他の受講生と議論できる。
(4)国際安全保障に関する教科書の著者や本授業担当者の議論を批判的に考察し、他の受講生と議論できる。
(5)2つの安全保障観の意義を、自らの考察を含めて、この授業を履修していない家族や友人に説明できる。

成績評価の方法および基準

授業内課題(読書メモの提出、小テストの解答、ディスカッションへの参加):40%(単なる出席は加点対象外)。
期末試験:60%(授業内の小テストおよびディスカッションにもとづいて出題)。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書『入門 人間の安全保障──恐怖と欠乏からの自由を求めて』長有紀枝中央公論新社 (中公新書)
教科書『平和のための戦争論──集団的自衛権は何をもたらすのか?』植木千可子筑摩書房 (ちくま新書)
参考文献『政治学の第一歩』砂原庸介、稗田健志、多湖淳有斐閣
参考文献『国際関係史の方法』(近刊)マーク・トラクテンバーグミネルヴァ書房

準備学修の内容

・教科書の内、担当者が指示する箇所を読み、読書メモを持って毎回の授業に参加する。
・小テストとその解説講義およびディスカッションの内容を踏まえて、期末試験の準備をする。

その他履修上の注意事項

・前半の教科書である『入門 人間の安全保障』は第2回の授業開始までに、後半の教科書である『平和のための戦争論』は第8回の授業開始までに入手すること。
・同じ担当者の「グローバル社会論I」(前期)を受講しておくと、授業内容の理解に便利である。ただし必須ではない。
・授業の進度や受講生の関心に応じて、内容を一部調整する場合がある。

授業内容

授業内容
第1回イントロダクション──授業の進め方と狙いの説明;教科書の説明
第2回国際社会とは何か──来歴と現在の特徴
第3回人間の安全保障概念の登場と発展
第4回人間の安全保障は誰が提供するのか
第5回安全保障の対象としての「自由」
第6回国際社会はどのように「人間の安全保障」に取り組んでいるか
第7回前半のまとめ
第8回インターミッション──暴力の人類史
第9回選択肢としての戦争?──日本の安全保障政策
第10回国際秩序の変容──アメリカの衰退がもたらすもの
第11回戦争の発生原因と抑止
第12回安全保障のディレンマ
第13回リベラル抑止は可能か
第14回複数の選択肢──日本はどのような組み合わせを選ぶべきか
第15回後半のまとめと全体の総括