グローバル社会論Ⅰ
担当者中谷 直司教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [社会学科]
科目ナンバリングSOC-311

授業の概要(ねらい)

 国際社会(英語にすればInternational Society; International Community; Global Community等々)とは何か。この質問に答えることは、通常考えられる以上に難しく、国際関係論の専門家にとっても容易ではない。国際社会は(おそらくかなり確実に)存在するのだが、それは曖昧で、多用で、我々が日常慣れ親しんでいる国内社会とも多くの点で異なるからである。

 以上の問題意識のもと、本講義では国際社会を多角的に理解するために有用な5つの視点を、各2~3回ずつ取り上げ、その意味・意義を解説する。 
 具体的なトピックは以下の通り。その上で、国際社会がより安定し、平和で、かつ公正なものとなるためには、どのような問題を克服しなければならないのかを考察する。
 1.20世紀に入って出現した集団安全保障(国際連盟、国際連合)の特質と、より伝統的な枠組みである軍事同盟(集団防衛)の関係、2.20世紀の二度の総力戦が、現代国際社会の基本的な性格に与えている影響、3.結果的に70年以上に及ぶ「長い平和」を実現した冷戦の基本的な性格と、現在の国際社会の基本構造に及ぼしている影響、4.アジア・アフリカ地域を中心に頻発する国内・国際紛争に、国際社会による「平和構築」が果たしうる役割と、今後の課題、5.現代世界の平準化(平等化)の主要な原動力の一つである「移民」が、国際および国内社会にとって持つ意味。

 授業では講義だけでなく、グループおよび全体でのディスカッションの時間も設ける。

授業の到達目標

(1)国際社会の基本的な特徴と日本との相互関係を多角的に理解するための基本的な視角を身に付ける。
(2)国際平和や正義、日本の対外行動を論じる際に、規範論(こうあるべき)と、事実評価(なぜこのような問題が起こるのか)を(まずは)区別して考えられるようになる。
(3)国際社会が、より安定し、平和で、かつ公正なものとなるためには、どのような問題を克服しなければならないのか、そのために日本が果たすべき(あるいはこれまでに、破壊的なものを含めて、果たしてきた)役割とは何かを、各受講生が考察できるようになる。

成績評価の方法および基準

・授業参加30%(リアクションペーパーの内容;ディスカッションへの参加)
・ブックレポート30%
・期末試験40%

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献『平和のための戦争論──集団的自衛権は何をもたらすのか?』植木千可子筑摩書房 (ちくま新書)
参考文献『容赦なき戦争』ジョン・ダワー (猿谷要、斎藤元一訳)平凡社 (平凡社ライブラリー)
参考文献『米国初代国防長官フォレスタル──冷戦の闘士はなぜ自殺したのか』村田晃嗣中央公論新社 (中公新書)
参考文献『平和構築入門──その思想と方法を問いなおす』篠田英朗筑摩書房 (ちくま新書)
参考文献『移民大国アメリカ』西山隆行筑摩書房 (ちくま新書)

準備学修の内容

・配付資料を用いて予習・復習を行う。
・4回予定しているディスカッションに向けて、自分の考えをまとめてくる(具体的な指示は授業内で行う)。
・授業内容を踏まえて、各自ブックレポートの作成を進める(新書中心の課題文献リストを配付する)。

その他履修上の注意事項

(1)教科書は使用しない。講義では毎回レジュメを配付し、講義全体の構造・流れを各受講生が確認しやすくする。あわせて、関連するビデオ教材なども積極的に使用し、理解の促進を図る。スライド資料も適宜用いる。
(2)講義では毎回リアクションペーパーを配付し、授業に対する感想・質問を書いてもらう。質問については、2~3をピックアップし、次回の授業冒頭で回答する。
(3)受講生の関心に応じて、進度や内容を一部調整することがある。

授業内容

授業内容
第1回国際社会とはどんなところか──その基本的な性格と来歴
第2回集団安全保障と集団自衛1──国際連合がめざしたもの
第3回集団安全保障と集団自衛2──日本外交史にみえる「同盟のディレンマ」
第4回総力戦と現代世界1──「遅れてきた」平和主義国家・日本
第5回総力戦と現代世界2──1つの国際社会・3つの国際政治
第6回冷戦1──なぜ始まったか/日本ヘの原爆投下と冷戦開始をめぐる論争
第7回冷戦2──なぜ安定したか/「長い平和」は世界と日本に何をもたらしたか
第8回ディスカッション1──国連と同盟には何ができるか(グループワークによる予備討論)
第9回ディスカッション2──国連と同盟には何ができるか(全体討論)
第10回平和構築1──その思想と方法
第11回平和構築2──克服すべき課題と日本の役割
第12回移民1──「移民」とは誰か(なぜ必要とされ、同時にしばしば非難されるのか)
第13回移民2──日本の「移民」経験(移出と移入と)
第14回ディスカッション3──日本の外交方針と移民政策は整合的か(グループワークによる予備討論)
第15回ディスカッション4──日本の外交方針と移民政策は整合的か(全体討論)