日本の公益事業Ⅰ
担当者橋本  悟教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [経済学科]
科目ナンバリングECP-221

授業の概要(ねらい)

 公益事業とは、エネルギー産業(電力、ガス)、公共交通(鉄道、バス、タクシー、航空など)、電気通信、上下水道などで、公的な要素の強い産業である。これらの産業では、一般企業と異なり、法律や規制などによって企業活動にさまざまな制約が課されたり、あるいは事業そのものが公的機関によって行われている。なぜこのような制約のもとで活動をしているのか、このような規制を取り払うとどうなるのかについて理解することがこの講義の目的である。具体例を取り上げながら、公的要素をもつ産業をいかにして効率的に経営させるかについても学習し、「公共性」と「私的性」について考えることで、公的規制の在り方について検討する。近年、公益事業の分野では、規制緩和や民営化が盛んに行われているが、その根拠や民営化の手法についても学習する。
 日本の公益事業Ⅰでは、主として具体的な公益事業の概要とそれぞれの事業においてどのような規制があるのかについて学習する。日本の公益事業Ⅱでは、主として現代の流れである規制緩和の概要とその評価について、さらにPPP(Public Private Partnership)やインフラファンドなどの新しい流れについても学習する。

授業の到達目標

 この講義における目標は以下のとおりである。
 (1)公益事業が規制のもとで活動する理由を理解する。
 (2)近年の規制緩和の意味を理解する。

成績評価の方法および基準

 授業中の課題(40%)、期末試験(60%)
 毎回、課題をだし、それに対して自分の意見を述べてもらう。その意見を成績評価の対象とする。
 期末試験は持ち込み可とする。期末試験は800字から1000字程度の論述試験を予定している。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書 テキストは特に指定しない。参考文献は以下の通り。
  
参考文献(2011)『現代公益事業』塩見英治有斐閣ブックス
参考文献(2007)『市場自由化と公益事業』藤原淳一郎・矢島正之(監修)白桃書房
参考文献(2008)『公共料金の経済学』桑原秀史有斐閣
参考文献(2010)『入門・産業組織』井手秀樹・鳥居昭夫・竹中康治有斐閣
参考文献(2018)『交通政策入門』衛藤卓也・大井尚司・後藤孝夫編同文館出版

準備学修の内容

 予習は新聞などで公益事業に関する情報を得ること。また、ミクロ経済学の「市場の失敗」の部分を確認すること。
 復習は以下の点に注意しながらしっかりと行ってほしい。
 (1)授業で学習した専門用語を覚える。
 (2)新聞やニュースで関連する記事に目を通し、その記事に対して自分の意見をもち、コメントできるようになること。

その他履修上の注意事項

 公益事業は社会にとって必要不可欠であり、かつ身近な存在であるが、どのように企業活動が行われているかを十分に理解していない人が多いと思われる。したがって、公益事業に関して興味のある方の履修を勧める。

授業内容

授業内容
第1回 日本の公益事業Ⅰでは、主として公益事業の理論的な要素と具体的な事業内容について解説する。
 イントロダクション(公益事業とは何か。経済学的分析手法)
第2回 公益事業の性質1(なぜ規制が必要か。外部性・公共財。道路事業などを例に)
第3回 公益事業の性質2(なぜ規制が必要か。自然独占性。電力産業などを例に)
第4回 公益事業のもつ課題(ユニバーサルサービス、民営化、PPPなど)
第5回 電力産業(電力産業の特徴)
第6回 電力産業(電力産業の特徴、および規制緩和の流れ)
第7回 都市ガス産業(都市ガス産業の特徴、シェールガスなど)
第8回 鉄道産業(鉄道産業の歴史・特徴)
第9回 鉄道産業(国鉄の民営化、上下分離)
第10回 鉄道産業(地方鉄道の将来)
第11回 航空産業(日本の航空産業の歴史)
第12回 航空産業(コンテスタブル市場、空港民営化、LCCの台頭)
第13回 高速道路・一般道路事業(道路公団の民営化、道路特定財源など)
第14回 バス事業(高速バス事業)
第15回 総復習