担当者 | 濱田 陽教員紹介 | |
---|---|---|
単位・開講先 | 選択 2単位 [日本文化学科] | |
科目ナンバリング | PHE-202 |
近代以降の日本では、世界に誇る哲学者、思想家たちが輩出している。
西洋文明の精神的中核としてのキリスト教に向き合い独自の立場を貫いた内村鑑三、日本初の独創的な哲学を切り拓いた西田幾多郎、大正期最大のベストセラー小説の作家にして社会事業家として東洋の聖人と讃えられ世界的名声を得た賀川豊彦(Kagawa Toyohiko)、名もなき職人たちの日常の手仕事に目を向けその美を思想のことばにまで高め表現した柳宗悦(Yanagi Muneyoshi)は、日本近代を眺める上で未来につながる、開かれた可能性を強く感じさせる存在である。その哲学的、思想的テーマは、外圧に向き合い、信念を養い貫き、自己と無の不可思議を探求し、孤独を突き抜けて他者と出会い、文化と美の可能性に目を見開く等、様々な魅力に満ちたものだった。
その思索と実践は、新型ウイルスによるパンデミックや人工知能など新テクノロジーの急激な発展、広がる社会矛盾や格差、解決の困難な地球環境問題に身を置くわたしたち現代人にとって、いかなる意味を有するだろうか。
これら人物たちが自ずから書いた気骨の文章を学ぶとともに、小規模授業の特色を生かし、履修者による対話の時間を定期的に設け、哲学や思想の学びの体験を深めていく。
哲学的問いと日本文化への関心と思考を養い、他者と対話し、複数の知的テーマを解説しながら自身の考察をまとめることのできる思考力、文章表現力を身につける。
授業参加、期末レポートにより総合評価 *期末レポートは、第13回授業終了直後にテーマを発表予定
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
---|---|---|---|
教科書 | |||
参考文献 | *参考文献は必要に応じ配布する |
次回授業で扱う予定の参考文献を事前に通読しておく。また、ディスカッションの効果的な進行のために適度な事前課題を設けることがある。
・授業進行はある程度前後する。
・LMSオンライン上で重要な情報はUPしていくため、対面授業の前後にLMSオンラインの方も確認する習慣をつけること。
回 | 授業内容 |
---|---|
第1回 | 一 本講義の進め方について 内村鑑三、西田幾多郎、賀川豊彦、柳宗悦それぞれについて、簡単に概説し、授業の概要を説明する。また、近代日本には、他に注目すべき近代の哲学者、思想家が綺羅星の如く存在するため、受講者それぞれのの関心を聞き、部分的に取り上げる可能性を探る。 |
第2回 | 二 内村鑑三と考える 近代日本が生んだ独立不羈の思想家による「後世への最大遺物」を読む。 |
第3回 | 二 内村鑑三と考える 敗戦の苦難において、いかに自らと国を救うかをテーマに論を展開する、インスピレーションに満ちた「デンマルク国の話 信仰と樹木とをもって国を救いし話」を読む。 |
第4回 | 二 内村鑑三と考える 信念と環境をテーマにディスカッションを行う。 |
第5回 | 三 西田幾多郎と考える 日本初の独創的哲学書『善の研究』抜粋を読む。 |
第6回 | 三 西田幾多郎と考える 第二次世界大戦中にも、人類の思考を自らの文明の破綻から救うべく、根源的な探求を続けた哲学者の「哲学論集」抜粋を読む。 |
第7回 | 三 西田幾多郎と考える 自己と無をテーマにディスカッションを行う。 |
第8回 | 四 賀川豊彦と考える 後に西洋世界から、ガンディー、シュヴァイツァーとともに東洋の三聖人と讃えられる作家、社会事業家、キリスト者による、日本デモクラシー初の大ベストセラー小説『死線を越えて』を読む。 |
第9回 | 四 賀川豊彦と考える 与謝野晶子のこころを揺さぶった『涙の二等分』と世界最大のNPO(非営利組織)としての生活協同組合を育てた協同組合論を読む。 |
第10回 | 四 賀川豊彦と考える 孤独と協力についてディスカッションを行う。 |
第11回 | 五 柳宗悦と考える 名もなき職人の手になる、日常生活で用いる品々に宿る美に着目し、民芸概念を提唱した思想家による白眉のエッセイであり、国境を超える文化受容の不可思議について論じた「喜左衛門井戸を見る」『茶と美』を読む。 |
第12回 | 五 柳宗悦と考える 美と醜の二項対立を超える美についての思想を展開し、世界的版画家・棟方志功をはじめとする弟子たちに大きな影響を与えた『美の法門』を読む。 |
第13回 | 五 柳宗悦と考える 文化が伝わり、創造される不思議と美についてディスカッションを行う。 |
第14回 | 講義のまとめ 期末レポートのための下書きを各自用意し、まとめのディスカッションを行う |
第15回 | 期末レポートのテーマ発表・解説 *LMSオンデマンド形式による授業、第13回直後に実施予定 |