日本文化と哲学Ⅰ
担当者濱田  陽教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [日本文化学科]
科目ナンバリングPHE-201

授業の概要(ねらい)

 悪を避け善を為す実践、この宇宙・世界における終わることのない幸せの探求、欠点を克服し得ない人間にとっての救い、学びつつ生きることの意味、差別を克服する根本思想…。
 聖徳太子、空海、親鸞、道元、日蓮が正面から向き合った、こうした哲学的、思想的テーマは、新型ウイルスによるパンデミックや人工知能など新テクノロジ−の急激な発展、広がる社会矛盾や格差、解決の困難な地球環境問題に身を置くわたしたち現代人にとって、いかなる意味を有するだろうか。また、彼らの存在は、倫理、道徳、信仰、巡礼、観光、食等の側面から、広い意味での文化にとって、いかなる意義を持つだろうか。
 これら日本哲学上のカリスマ的思想家たちの生涯と思想の特徴を学ぶとともに、師であり友でもありうる存在と位置づけ、現代を生きるわたしたちとの対話を試みたい。小規模授業の特色を生かし、先人たちの、普遍性を有する哲学的試行錯誤について共有可能な知識を解説した上で、履修者によるディスカッションの時間を定期的に設け、時空を超えた学びに取り組んでいく。

授業の到達目標

 哲学的問いと日本文化への深い関心と広い思考を養い、柔軟に他者と対話し、複数の知的テーマを適切に解説しながら自身の考察をまとめることのできる思考力、文章表現力を身につける。

成績評価の方法および基準

 授業参加、期末レポートにより総合評価 *期末レポートは、第13回授業終了直後にテーマを発表、第14回授業日を含む3日間で提出予定。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献「日本宗教」『宗教の事典』(2012年10月刊、663-680頁)濱田陽(山折哲雄監修)朝倉書店
参考文献*MELIC指定図書コーナーに配置、その他参考資料は追加で配布する

準備学修の内容

 参考文献に沿って進むため、次回授業で扱う予定の箇所を事前に通読しておく。その他、ディスカッションの効果的な進行のために適度な事前課題を設けることがある。

その他履修上の注意事項

 授業中に参考文献中の着目すべき箇所を自分の判断でマークし、主体的に気づいたことや考えをメモするなど、一歩一歩理解を深めて欲しい。
 「7.授業内容」には参考文献各章が割り振られているが、授業進行はある程度前後する。

授業内容

授業内容
第1回一 聖徳太子 1生涯、2太子の遺言の射程 3理想と現実の果てに 本講義の進め方について *LMSによるオンデマンド形式による授業
 聖徳太子の生涯、遺言について解説、考察する
第2回二 空海 1「真魚」誕生から入唐まで
 空海の生涯について解説、考察する
第3回二 空海 2帰国後の活躍
 空海の思想形成について解説し、ディスカッションを行う
第4回二 空海 3「三教指帰(さんごうしいき)」と教(おしえ)の共存
 空海の初の作品とされる戯曲的思想書を解説し、ディスカッションを行う
第5回三 親鸞 1生涯
 親鸞の生涯について解説、考察する
第6回三 親鸞 2夫の夢、妻の夢
 親鸞とその妻・恵信尼(えしんに)が見たそれぞれの夢の内容を解説し、ディスカッションを行う
第7回三 親鸞 3時計回りの軌跡、悪に浸透した光
 親鸞の思想形成、『歎異抄』について解説し、ディスカッションを行う
第8回四 道元 1生涯
 道元の生涯について解説、考察する
第9回四 道元 2道元がいだいた人生の問い
 道元の思想形成、主著『正法眼蔵』について解説し、ディスカッションを行う
第10回四 道元 3道元が再創造した規律
 日本の食文化に大きな影響を与えた『典座教訓(てんぞきょうくん)』を中心に解説し、ディスカッションを行う
第11回五 日蓮 1「旃陀羅(せんだら)の子」誕生から『立正安国論』まで
 日蓮の生涯について解説、考察する
第12回五 日蓮 2大迫害で開眼『法華経』のシンプルな実践
 日蓮にとっての『法華経』について解説し、ディスカッションを行う
第13回五 日蓮 3日蓮思想の核心
 「開目抄」「観心本尊抄」などの深い哲学的思考を示す晩年の思想に着目、こころと実践のダイナミックな世界観の魅力を解説し、ディスカッションを行う
第14回講義のまとめ
 期末レポートのための下書きを各自用意し、まとめのディスカッションを行う
第15回期末レポートのテーマ発表・解説 
 *LMSオンデマンド形式による授業、第13回直後に実施予定