犯罪心理学特論(司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開)
担当者岡本 潤子教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [文学研究科 臨床心理学専攻]
科目ナンバリング

授業の概要(ねらい)

 本授業では,司法・犯罪に関する心理学の理論および支援について学びます。
 犯罪および非行についての捜査,司法判断,矯正処遇,更生保護の分野では,法律や制度などのハード面を整えるだけでは人間行動としての犯罪行為の理解も,立直りに対する支援もおこなうことはできず,心理臨床の叡智と技術を抜きにして扱えません。犯罪加害の対極にある被害についても,その影響の理解や支援に,心理臨床の知恵が欠かせません。
 また,民事事件の分野では,法律で人を扱おうとするときにできる隙間が大きいのが家事事件です。特に,子の福祉が問題となる場面で,心理臨床の活用が期待されます。
 犯罪や家事事件に関わる体験は,ひとの人生において,多くが最大級の危機場面です。臨床の現場でも,クライアントが,述べている主訴の背景に,犯罪や家事事件に関連する困りごとを抱えていることが多いものです。犯罪や家事事件の取り扱いの仕組み,また,それらの問題に対する心理的支援のあり様を理解していることは,心理士としての力を厚くします。
 授業では,犯罪や非行の要因理論,裁判および審判の制度,矯正および更生保護における支援について学びます。さらに,犯罪被害と制度の現状,さらに修復的司法の理念について学びます。また,司法現場における子の福祉の問題について,家事事件の枠組みの中から学びます。
 学生の発表と教員からの授業を織り交ぜて学修を進める予定です。また,家庭裁判所の見学研修を予定しています。少年非行事件および家事事件の現場で,心理臨床が果たす役割と節度を実感する体験となることを期待します。

授業の到達目標

 ① 犯罪,非行,犯罪被害及び家事事件についての基本的事項を概説できる。
 ② 司法・犯罪分野における問題に対して必要な心理に関する支援について説明できる。

成績評価の方法および基準

 授業への参加状況(授業での発表,討議への参加,振り返りシートの提出,見学への参加姿勢など)(70%),確認テスト(30%)の割合で,総合的に評価します。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書 テキストは指定せず,適宜プリントを配布します。
参考文献『犯罪心理学』 バートル&バートル北大路書房
参考文献『司法・犯罪心理学』 門本泉(編著)ミネルヴァ書房
参考文献『コンパクト司法・犯罪心理学』 河野荘子・岡本英生(編著)北大路書房
参考文献

準備学修の内容

 発表準備へは十分時間をかけて取り組んでください。また,発表は一方的なプレゼンテーションではなく,フロアを討議に巻き込むダイナミックなものとなることを期待します。
 平素から一社会人としての関心だけでなく,専門家としての立ち位置を意識して,事件報道,身近な犯罪現象,子の福祉を巡る法的問題について,積極的に興味関心をもつようにしてください。社会への関心を持ちつつ,専門家としての研鑽に努める第一歩を,実践してほしいと思います。

その他履修上の注意事項

 授業では,素朴な疑問を出し合い,活発な討議を行うことを期待します。
 公認心理師等,心理士としての実務の中で,法に触れる逸脱行為,家庭内での子の福祉に関わる問題,夫婦や親子の法律関係を扱う機会は将来必ずやってきます。一方,司法・犯罪および家庭に関することがらは,個人の先入観や偏見が強く影響する分野です。これまでに自身の中に蓄積されてきている固定観念を見直し,自身の立ち位置を意識して学ぶことが大切です。
 この科目は,公認心理師試験受験資格を得るために必要な科目です。

授業内容

授業内容
第1回 イントロダクション。司法・犯罪に関する心理学の分野について。発表の分担決定等。
第2回 犯罪や少年非行の制度について(授業)
 (犯罪・少年非行の事件の流れ,科刑・処遇の実際,裁判員裁判など)
第3回 子の福祉が法に関わる場面における制度について(授業)
 (家事事件の制度,離婚の仕組み,面会交流など)
第4回 学生の発表と討議 ①
第5回 学生の発表と討議 ②
第6回 振り返り授業
第7回 学生の発表と討議 ③
第8回 学生の発表と討議 ④
第9回 振り返り授業と討議,見学の準備
第10回 家庭裁判所見学(予定)
第11回 学生の発表と討議 ⑤
第12回 学生の発表と討議 ⑥
第13回 振り返り授業と討議,見学の振り返り
第14回 非行事例,家事事件事例から学ぶ(既発刊事例を使って) (LMS オンデマンド)
第15回 テスト,授業全体の振り返り