心理臨床家として心理療法や対人援助を行う上で、単に臨床心理学関連の理論や知識を得るのみではなく、体験学習を通してその理念や具体的技法を総合的に体得する必要がある。実際の臨床心理学的な対人援助は、基本的理論や知識を背景としながらも、個別性や関係性を重視しながら多様に展開していく。
本大学院においては、心理臨床家を育てるために、「臨床心理基礎実習」と「臨床心理実習」を重要な必修カリキュラムとして位置付けている。この「臨床心理基礎実習」は修士1年全員を対象とするものである。この実習を通じて、心理療法や対人援助の基本的考え方や技法の習得を目指す。これらの習得によって、実習生(心理臨床家を目指す者)として実際にクライエントを担当し、臨床心理学的対応が可能となるレベルを目指す。
この基礎実習の最終目標は、帝京大学心理臨床センターをはじめとする実習機関において、実際にクライエントへ対応できるレベルまで技能の向上を行うことである。この目標は当授業および実習に出席し毎回体験を積み重ねることで達成可能となるので、欠席しないようにコンディションを整えることが重要である。期末にはOSCE(Objective Structured Clinical Examination;客観的臨床能力試験)を行い、秋学期に予定されている心理臨床センターでの試行カウンセリング実習・見学陪席実習の前に最低限身につけておくべき臨床的ふるまいについての評価・指導を行う。なお、心理臨床センターにおける実習は、教員による評価をもって一定の基準を満たした者が行うことができる。
具体的な到達目標は、以下の通りである。
1)心理面接の意味と機能、それを構成する諸要素について説明することができる。
2)インテイク面接の機能と意義を理解し、その一端を模擬事例ロールプレイにて実践することができる。
3)応答技法について理解を深め、初歩的実践を行うことができる。
4)クライエントや対象者への充分な敬意の姿勢を持てる。
5)実習上のルールを理解し、その責任を果たすことができる。
ロールプレイ実習をはじめとする各アクティビティへの参加度・理解度40%
課題30%
実習生としての基本的姿勢・態度20%
センター実習10%
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | 『新訂 方法としての面接』 | 土居健郎著 | 医学書院 |
教科書 | 『試行カウンセリング』 | 鑪幹八郎著 | 誠信書房 |
教科書 | 『面接法』 | 熊倉伸宏著 | 新興医学出版社 |
教科書 | 『カウンセリングとは何か』 | 平木典子著 | 朝日選書 |
参考文献 |
実習形式の授業であるが、その準備・事後学修として種々の課題が呈示される。期限を守ることは勿論、関連文献に目を通すなどして、十分に取り組むこと。
真剣に学ぼうとしている他の院生の邪魔をしないこと(私語、携帯電話、遅刻・欠席など)。主体的・創造的な参加が望まれる。また、実習生として指導を受ける立場であることを自覚し、教員・スタッフの指導、指示に従う姿勢が求められる。
心理臨床家になるためには、単に授業に出席するだけではまったく不十分である。カリキュラムはあくまで最低限の考え方や体験を提供するものであり、それらをどのように深めていくか個人的に修練が必要となる。
心理臨床場面は常に未知の体験の連続である。知らないことへの探究心や研究の姿勢を持つことが重要となる。臨床心理学の研究のマインドを保ちながら、その基本となる姿勢をこの実習で身につけてほしい。
なお、OSCEの実施にあたり、外部講師を予定している。この科目は臨床心理学専攻に特化した科目である。
回 | 授業内容 |
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第1回 | ・授業ガイダンス(オンライン授業) ・援助専門職を目指すということ |
第2回 | ・ロールシャッハテスト体験 |
第3回 | ・センター・初回ガイダンス ・はじめてのカウンセリング体験 |
第4回 | ・心理面接―「分かる」と「分からない」こと ・インテイク面接 |
第5回 | ・応答技法ワーク&トレーニング |
第6回 | ・M1&M2合同:各種実習体験の振り返りと共有 ・ロールプレイ実習ガイダンス |
第7回 | ・ロールプレイ実習(第一回面接) |
第8回 | ・ロールプレイ実習(GSV1) |
第9回 | ・ロールプレイ実習(GSV2) |
第10回 | ・ロールプレイ実習(第二回面接) |
第11回 | ・ロールプレイ実習(GSV3) |
第12回 | ・センター運営実習ガイダンス |
第13回 | ・模擬クライエントとのインテイク面接RP&ライブGSV(OSCE) |
第14回 | ・センターケース・M1&M2合同事例グループワーク |
第15回 | ・個別SVによるまとめ(オンライン授業) |