超域文学特論Ⅰ
担当者大野 雅子教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [外国語研究科 超域文化専攻]
科目ナンバリング

授業の概要(ねらい)

この授業においては、ヨーロッパの文学と芸術における「愛」のテーマを探求する。イタリア・ルネッサンスにおいて、ティツィアーノが描いた「聖なる愛」と「俗なる愛」、ボッティチェリが描いた「天上の美」と「地上の美」。「宮廷風恋愛」は突如として12世紀のフランスに誕生したと言われる。イギリス文学の歴史を辿れば、ヨーロッパ的「天上の女性像」は、シェイクスピアのロマンス劇に見られるような「結婚愛」によって止揚され、18世紀に至ると、プロテスタンティズムが「ロマンティック・ラヴ」の観念を生み出す。一方、愛と死との両面価値的関係性は「エロス」として奥底に流れ続ける。その怪しげな魅力は日本の三島由紀夫をも捉えた。また、フロイトの言う「ヒステリー」が女性特有のものとされるのもエロスと関係が深い。このように、ヨーロッパに脈流のように流れる複数の「愛」の伝統を主要な文学作品と批評とを渉猟しながら学んでゆく。

授業の到達目標

1.ヨーロッパの文学と芸術についての知識を修得する。
2.ヨーロッパの文学と芸術における「愛」のテーマを学ぶ。
3.批評的観点から文学作品を読むことによって思考力を養う。
4.英語の速読力を身につける。

成績評価の方法および基準

授業内提出物20%、期末テスト20%、発表60%

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献ルネッサンスの光と闇高階秀爾中公文庫
参考文献イコノロジー研究(上下)パノフスキーちくま学芸文庫
参考文献愛とアレゴリーC.S.ルイス筑摩叢書
参考文献春の雪三島由紀夫新潮文庫
参考文献失楽園(上下)ジョン・ミルトン岩波文庫
参考文献ヒステリー研究ブロイアー、フロイトちくま学芸文庫
参考文献エロティシズムジョルジュ・バタイユちくま学芸文庫
参考文献盲目と洞察ポール・ド・マン月曜社
参考文献ヤコブソン・セレクションロマン・ヤコブソン平凡社
参考文献ミメーシス(上下)アウエルバッハちくま学芸文庫

準備学修の内容

毎回の授業で発表できるように準備する。

その他履修上の注意事項

授業は学生の発表が中心である。受け身的に知識を得ようとするのではなく、自ら探求する精神が重要である。

授業内容

授業内容
第1回授業説明
第2回ティツィアーノの「聖なる愛と俗なる愛」における「天上の愛」と「地上の愛」
第3回ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」と「春」におけるネオ・プラトニズム
第4回『バラ物語』における愛
第5回宮廷風恋愛
第6回C.S.ルイスの批評:愛のアレゴリー
第7回バタイユの批評:エロティシズム
第8回三島由紀夫における禁忌と性
第9回ロマンティック・ラヴの誕生
第10回ポール・ド・マンの批評:アレゴリーとシンボル
第11回ヤコブソンの批評:メタファーとメトニミー
第12回アウエルバッハの批評:ミメーシス
第13回ミルトンの『失楽園』におけるアダムとイヴ
第14回フロイトの批評:女性とヒステリー
第15回まとめと期末テスト