担当者 | 佐藤 光宣教員紹介 | |
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単位・開講先 | 選択 2単位 [総合基礎科目] | |
科目ナンバリング | ECH-102 |
経済史は、経済現象が歴史的にどのように生起してきたのかを問う学問である。この経済史に関する本授業は、ソースタイン・ヴェブレン(Thorstein Veblen)――『有閑階級の理論』(The Theory of the Leisure Class, 1899.)の著者として著名なアメリカの経済学者――の制度的接近方法に依拠しながら、イギリス、ドイツおよびアメリカにおける経済社会の進化とそれが含む諸問題を取り上げる。
授業を通じて私は、ヴェブレンの基本的見地を再確認しつつ、文化変化の理論への接近として経済生活の歴史的概括を試みる。こうして本授業は、資本主義経済制度の発展とその変容についての論議をめぐって具体的に展開する。この過程で資本主義経済制度の概念に次々に規定性が加えられ、かかる制度の限界の究明に向かう。
それゆえ本授業は、現今の経済社会の実情を歴史的視点から再検討することをもって、その概要とする。
経済史という学問分野に学生の関心を惹き付けることが、まずもって授業の到達目標への接近に他ならない。なおまた、経済生活の流れを掴むことに留まらず、学生が人生設計をするうえでの確たる一歩を踏み出す勇気を学び取ることは、この授業が目指す遠大な到達目標である。学び取った知識と勇気は、就職活動に際して、また社会人となってから、人間の能力としていよいよ開花するであろう。したがって、学生は履修後も継続して経済史に慣れ親しむことが、授業の最終的な到達目標である。そこに至るべき授業の個別の到達目標は、次の通りである。
(1)アメリカ経済の独占の運動から金融資本の成立までの経済史の動向が理解できる。
(2)1929年10月の株価大暴落の主たる要因について客観的に説明できる。
(3)1930年代の大恐慌が世界経済に与えた影響が学べる。
(4)ヴェブレン経済学の優位性についての知見が得られる。
(5)第2次世界大戦の遠因とその経済的帰結について認識できる。
後期期末試験の点数を中心に、学修到達度調査小テストと平常点によって成績を決定する。その配分基準は次の通りである。
期末テスト60%/学修到達度調査小テスト20%/平常点20%
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | テキストは使用しない。主たる参考書は下記の通りである。テキストと参考書に替えて、資料を授業時に配付する。 | ||
参考文献 | The Theory of the Leisure Class, 1899 | Thorstein Veblen | New York: The Macmillan Company |
参考文献 | 有閑階級の理論 | 小原敬士 訳 | 岩波書店、昭和36年刊 |
参考文献 | Imperial Germany and the Industrial Revolution, 1915 | Thorstein Veblen | New York: Macmillan |
参考文献 | La dynamique du capitalisme, 1985 | Fernand Braudel | Paris: Arthaud |
参考文献 | 歴史入門 | 金塚貞文 訳 | 中央公論新社、平成21年刊 |
参考文献 | 資本主義世界の成立 | 藤瀬浩司 著 | ミネルヴァ書房、昭和55年刊 |
参考文献 | A Concise Economic History of the World: From Paleolithic Times to the Present, 2002 | Larry Neal・Rondo Cameron | USA: Oxford University Press |
参考文献 | 概説 世界経済史〈2〉工業化の展開から現代まで | 速水融 訳 | 東洋経済新報社、平成25年刊 |
まず、「1930年代の大恐慌下の主要各国の経済生活」についてレポートにまとめること。
次いで、経済生活の歴史を理解することは、先人が歩み築いてきた経験と知識および文化に対して尊敬の念を深めるに違いない。学生は授業に臨んでは、経済学的および歴史的な観点から物事を考える態度で聴講し、読み書きすることを望む。歴史について深く真摯な関心を持つことは、授業の準備として何より幸いである。
なお、授業2単位週90分間の授業については、週180分以上の授業時間以外の学習時間が必要である。本授業も、その例外ではない。
「経済史Ⅰ」を受講した学生のみが「経済史Ⅱ」を受講することができる。
なお、毎回の授業に際して学生は勉学のための秩序を乱すことのないよう、まず要望する。また、一貫した知的環境のなかで授業が進展するよう、併せて要望する。
回 | 授業内容 |
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第1回 | プロローグ:経済史Ⅱの開講に際して【オンライン授業】 ―授業の進め方・授業の目標および評価方法について― |
第2回 | ジャン・カルヴァン(Jean Calvin)と宗教改革思想① ―予定説とその経済的効果― |
第3回 | ジャン・カルヴァンと宗教改革思想② ―アメリカの建国と「資本主義の精神」の変容― |
第4回 | アメリカ資本主義と奴隷 ―南北戦争の経済的要因― |
第5回 | アメリカ資本主義とその動向 ―南北戦争から第一次世界対戦まで― |
第6回 | アメリカとドイツの独占の運動 ―両国における大企業の成立― |
第7回 | アメリカの資本主義 ―1920年代を中心として― |
第8回 | アメリカ資本主義の機能と性質 ―ヴェブレンの『営利企業の理論』に基づいて― |
第9回 | アメリカ資本主義の動揺 ―株価の大暴落と経済的破局― |
第10回 | 市場経済の崩壊とカール・ポラニー(Karl Polanyi) ―大転換(The Great Transformation)― |
第11回 | ドイツの経済復興 ―第三帝国の経済政策― |
第12回 | ニュー・ディール:二つの処方箋 ―ヴェブレンの「社会的購買力」とケインズの「有効需要」― |
第13回 | 現今における経済生活の文化的要因とヴェブレンの卓見 ―「金銭的競争」と「効率の意識的撤収」― |
第14回 | 後期試験 ―複数のキーワードから特定の授業内容を説明する論述試験― |
第15回 | エピローグ:経済史Ⅱを終えるにあたって【オンライン授業】 ―後期試験の講評・その他― |