考古学史Ⅰ
担当者櫛原 功一教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [史学科]
科目ナンバリングARC-211

授業の概要(ねらい)

  主に日本考古学の学史を学ぶ講義であり、学史や研究史を通して考古学の方向性を探る。日本考古学は、明治初期のモースによる大森貝塚の発掘調査が幕開けとされるが、その後、さまざまな画期を経て今日に至る。これまで、どのような課題や仮説のもと、どのような研究過程、議論が行われ、どのような結論、考古学理論が得られたのか、という学史を学ぶことは、これからの考古学を志す学生にとって最も重要で、基本的な学びといえる。したがって、本講義では前半で近世以前から現代に至る考古学史を俯瞰し、後半では旧石器時代から中近世までの時代別での諸問題、諸議論、論争、学説について学ぶこととする。

授業の到達目標

 学史を学ぶことで、今日の日本考古学の歩みと現状を学び、今後の課題、展望、方法論について思考する。この授業を通し、各自が考古学研究の何について、どのように取り組んでいくのかを考えるうえで、関心をもつテーマを見いだし、研究テーマを明確にし、研究のための指針を学び、方法論を獲得することが望ましい。また論文作成においては、まず学史を正しくおさえることが肝要とされるが、学史の深い理解の中にこそ、さまざまな課題を見いだすことができる。


成績評価の方法および基準

 授業で取り上げた主な重要遺跡、遺物の発見、調査、研究者、論争、考古学理論に関する記述試験(80%)、レポート、授業態度を評価する。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書 教科書は指定しないが、授業時に取り上げた文献に必要があれば目を通す。必読すべきものはコピーを事前配布する。
参考文献『日本考古学を学ぶ』(1)~(3)大塚初重・戸沢充則・佐原真編有斐閣
参考文献『論争・学説 日本の考古学』1~6・別巻桜井清彦・坂詰秀一編雄山閣
参考文献『岩波講座 日本考古学』1~7・別巻近藤義郎他 編岩波書店

準備学修の内容

 各回の授業時に基本事項や基本文献を羅列する。論争や論点などの学史を結果論として理解するだけではなく、当時の論文や報告を解題することで、その時代背景、情報量が限られた中での研究過程を知るとともに、自分自身の課題として考察すること。

その他履修上の注意事項

 春季実施の本授業は、秋期実施の「考古学史Ⅱ」とセットをなすものであり、考古学史Ⅱではさらに個別テーマごとに深く掘り下げて学ぶ場となっているので、合わせて受講されたい。

授業内容

授業内容
第1回講義の概要説明。世界の考古学史とわが国での近世以前の考古学史について学ぶ。
第2回大森貝塚以降の明治期の考古学史について学ぶ。(オンライン)
第3回大正から戦前における考古学史について学ぶ。
第4回戦後の大転換期から昭和40年代の考古学史について学ぶ。
第5回昭和50年代以降の大規模開発時代における考古学史について学ぶ。
第6回平成以降、今日までの現代における考古学史について学ぶ。
第7回時代別考古学史ー旧石器時代。学史、論争、ねつ造問題のほか、日本人はどこからきたか、その研究史と研究法などについて学ぶ。
第8回時代別考古学史ー縄文時代1(草創期・早期)。縄文時代の開始時期に関する議論、年代論、最古の縄文土器、土器の起源論、土器編年論などの研究史について学ぶ。
第9回時代別考古学史ー縄文時代2(前期・中期)。土器型式論、年代論、環状集落論、竪穴住居の構造論、縄文農耕論、大型住居の機能論、土偶の出現と変遷に関する研究史について学ぶ。
第10回時代別考古学史ー縄文時代3(後期・晩期)。中期末の寒冷化現象と集落立地や構造、住居形態の変化について、環状列石、石棺墓、大型祭祀遺構の出現に関する研究史について学ぶ。
第11回時代別考古学史ー弥生時代。弥生時代の開始時期、弥生人の起源、稲作の開始と伝播、各種植物栽培に関する研究史について学ぶ。
第12回時代別考古学史ー古墳時代。古墳時代の始まり、前方後円墳の起源と分布論、国家の形成に関する諸議論、古墳時代の実年代、三角縁神獣鏡の製作地と配布に関する研究史を学ぶ。
第13回時代別考古学史ー古代。国府、国衙研究、土師器・須恵器年代論等に関する研究史を学ぶ。
第14回時代別考古学史ー中近世。土師質土器の用途論、地下式坑の時期と機能、竪穴住居の消滅と中世建築への変遷、礎石建ち建物の出現、山城の変遷論等に関する研究史を学ぶ。
第15回まとめと授業内試験。