比較考古学研究
担当者櫛原 功一教員紹介
単位・開講先選択  4単位 [文学研究科 日本史・文化財学専攻]
科目ナンバリング

授業の概要(ねらい)

 考古学研究において、世界の各地、あるいは同じ日本列島での地域間での比較、時代を越えた比較を行うことで歴史や文化の本質を明らかにすることができる場合がある。社会を取り巻く地理的環境や自然環境の違い、時代の背景や社会制度、集団や地域、国家のまとまり、周辺地域との交流などの様相によって、2つあるいはそれ以上の事象、社会、文化、時代の比較により類似性とともに相違性を見いだすことができるが、それを端緒として各時代での個別テーマの研究を深化する方法が比較考古学研究である。ここでは時空的に普遍性をもつさまざまなテーマを取り上げ、最近の研究成果を加えて比較し、各時代の特性を明らかにする。このように比較考古学は歴史研究を行ううえでのひとつの方法論である点をよく理解し、課題レポートや口頭発表を通して実践的な作業を行う。

授業の到達目標

 比較考古学の特性を理解したうえで関心あるテーマを見いだし、何を比較することによって何を明らかにしようとするのか明確にすること。そのうえで比較のための情報、史資料や文献を集め、それぞれの課題に取り組む。その結論については口頭発表によりプレゼンテーションを行い、議論を行う。

成績評価の方法および基準

 レポートと口頭発表(80%)、授業時の学習に対する姿勢(20%)を評価の対象とする。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書 教科書は指定しない。必要な文献は授業時に指示する。
参考文献『市民の考古学1 ごはんとパンの考古学』藤本強同成社
参考文献『市民の考古学2 都市と都城』藤本強同成社
参考文献『佐原真の仕事2 道具の考古学』金関恕・春成秀爾編岩波書店
参考文献『UP考古学選書6 斧の文化史』佐原真東京大学出版会

準備学修の内容

 参考文献にあげた書籍や、授業時に示す文献、論文を熟読し、自分の関心あるテーマを探すこと。終盤でレポートをもとに口頭発表を予定するので、それに向けて準備する。

その他履修上の注意事項

 前半の春季では日本を中心とした内容となるが、後半の秋季では世界に視野を広げ、よりグローバルな見方を試みることとなる。

授業内容

授業内容
第1回授業の概要説明。何をどう比較するか、についてのガイダンスとする。
第2回土器製作と文様ー縄文時代での変化、世界の中での特異性と普遍性、土器文様のもつ意味の比較について学ぶ。(オンライン)
第3回土器製作と文様ー縄文から弥生、古墳への変化と器種分化の比較について学ぶ。
第4回土器製作と文様ー古代~近世の土器製作技術、土器のもつ意味の比較について学ぶ。
第5回土器製作と文様ー文様を中心とした縄文と弥生、それ以降の時代の比較や、縄文時代でも文様が持つ意味に違いがあることを学ぶ。
第6回住まいと集落ー各時代の竪穴住居跡の多様性と画一性の比較について学ぶ。
第7回住まいと集落ー各時代の掘立柱建物跡の構造と機能の比較について学ぶ。
第8回住まいと集落ー各時代の集落立地の比較について学ぶ。
第9回住まいと集落ー集落のかたちと構造の比較について学ぶ。
第10回祭祀と墓域ー旧石器時代~縄文時代中期の先祖祭祀と墓域形成、土偶の出現と発展について学ぶ。
第11回祭祀と墓域ー縄文時代後期~弥生時代の墓制の比較と首長墓の形成について学ぶ。
第12回祭祀と墓域ー西日本、東日本における古墳の規模や構造などを比較する。
第13回農耕ー栽培植物と栽培化過程、農耕具の比較について学ぶ。
第14回石器と金属器-縄文時代と弥生時代の石器、石器から金属器への変化などについて学ぶ。
第15回移動と定住-居住形態や生業形態の違いによって、生活形態はどのように変化したのかについて学ぶ。
第16回環境と適応-熱帯、温帯、乾燥地帯など世界中にはさまざまな環境に適応した生活が存在したことが明らかになっている。そうした観点で異文化を比較検討する。
第17回道具-斧のほか、ノコギリ、鉋などを取り上げ、列島内での時代的変化、世界でのあり方について学ぶ。
第18回住まいと空間区分-住まいには男と女、右と左といった空間区分が存在する。世界の民族誌や考古学的な調査成果を事例として検討する。
第19回イエと集団-イエに集う集団は家族とされるが、その内容については時代によって異なっている。また集落を構成する集団についても一様ではない。
第20回成人儀礼と抜歯、入れ墨、婚姻-日本および世界おける抜歯をはじめとする成人儀礼の変遷などについて学ぶ。
第21回服飾と装身具-古代から現代に至るさまざまな時代、地域の服飾、装身具を比較する。
第22回遊牧民と定住民-世界中には定住民が都市を形成し、その周辺には遊牧民が取り巻き、両者が共存する世界がある。
第23回都市、集落-日本の都城や都市と世界の都市を比較し、その構造の違いや類似性について考える。
第24回調理と食料-世界的には調理施設の違いとして囲炉裏と竈があり、栽培植物、主食や調理方法の違いが浮き彫りになる。
第25回土器作り-土器作りの男女の問題、文様の意味、ろくろや回転台の使用、叩き技法と粘土紐技法など、土器作りの比較を行い、その要因を探る。
第26回屋根瓦の東西-中国を中心とした瓦作りと、ヨーロッパを中心とする瓦作りの比較を行うとともに、構造材や建築構造の比較を行う。
第27回コインと銭-ヨーロッパから中国、日本における製作技法、デザイン、材質などをもとにした比較検討を行う。
第28回学生による研究発表、討論。
第29回学生による研究発表、討論。
第30回まとめと総括。