日本の公益事業Ⅱ
担当者橋本  悟教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [経済学科]
科目ナンバリングECP-222

授業の概要(ねらい)

 公益事業とは、エネルギー産業(電力、ガス)、公共交通(鉄道、バス、タクシー、航空など)、通信、放送、郵政事業、上下水道などで、公的な要素の強い産業である。これらの産業では、一般企業と異なり、法律や規制などによって企業活動にさまざまな制約が課されたり、あるいは事業そのものが公的機関によって行われている。なぜこのような制約のもとで活動をしているのか、このような規制を取り払うとどうなるのかについて理解することがこの講義の目的である。具体例を取り上げながら、公的要素をもつ産業をいかにして効率的に経営させるかについても学習し、「公共性」と「私的性」について考えることで、公的規制の在り方について検討する。また、近年、規制緩和や民営化が盛んに行われているが、その根拠や民営化の手法についても学習する。
 授業は、基本的にレジュメを用いて行い、受講生のレベルにあわせて難易度は調整する予定である。
 なお、日本の公益事業Ⅱでは、現代の流れである規制緩和の概要とその評価について航空産業を例に挙げて解説するとともに、さらにPPP(Public Private Partnership)やインフラファンドなどの新しい流れについても学習する。

授業の到達目標

 この講義における目標は以下のとおりである。
 (1)公益事業が規制のもとで活動する理由を理解する。
 (2)近年の規制緩和の意味を理解する。

成績評価の方法および基準

 授業中の課題(40%)期末試験(60%)
 授業への参加度、質問なども考慮する。原則として期末試験は持ち込み可とする。受講生はしっかりと勉強する必要がある。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書 テキストは特に指定しない。参考文献は以下の通り。
  
参考文献(2011)『現代公益事業』塩見英治有斐閣ブックス
参考文献(2020)『公益事業の変容』公益事業学会編関西学院大学出版会
参考文献(2007)『市場自由化と公益事業』藤原淳一郎・矢島正之(監修)白桃書房
参考文献(2008)『公共料金の経済学』桑原秀史有斐閣
参考文献(2010)『入門・産業組織』井手秀樹・鳥居昭夫・竹中康治有斐閣
参考文献(2018)『交通政策入門』衛藤卓也・大井尚司・後藤孝夫編同文館出版

準備学修の内容

 予習はミクロ経済学の基本的な用語を確認すること。特に市場の失敗の部分をしっかりと確認すること。
 復習は以下の点に注意しながらしっかりと行ってほしい。
 (1)授業で学習した専門用語を覚える。
 (2)新聞やニュースで関連する記事に目を通し、その記事に対して自分の意見をもち、コメントできるようになること。
 (3)レジュメの演習問題を解く。

その他履修上の注意事項

 公益事業は社会にとって必要不可欠であり、かつ身近な存在であるが、どのように企業活動が行われているかを十分に理解していない人が多いと思われる。公益事業に関して少しでも興味のある方の履修を勧める。

授業内容

授業内容
第1回 イントロダクション(公益事業とは何か。経済学的分析手法)
第2回 公益事業の性質の復習(規模の経済、自然独占性)
第3回 公益事業の性質の復習(外部性)
第4回 ユニバーサルサービスとネットワーク性
第5回 鉄道産業(鉄道産業の歴史)
第6回 鉄道産業(鉄道産業の規制と規制緩和)
第7回 鉄道産業(都市部の混雑と地方の赤字ローカル線対策)
第8回 電力産業(電力産業の歴史と規制)
第9回 電力産業(電力産業の規制緩和)
第10回 電力産業とガス産業(電力・ガス産業の将来、カーボンニュートラル社会)
第11回 ガス産業(ガス産業の歴史と規制緩和)
第12回 公益事業の民営化・活性化(自由化や競争促進と安定供給の両立について検討する)
第13回 PPP(PFI)と公益事業
第14回 ファンドによる資金調達(インフラファンド)と公益事業
第15回 総復習(今までの内容の総括)