史学概論Ⅱ
担当者楯身 智志教員紹介
単位・開講先必修  2単位 [史学科]
科目ナンバリングHSG-202

授業の概要(ねらい)

 学生諸君は大学入学までに、歴史科目の学習にかなりの時間を費やしてきたことと思う。そこでは、日本史・世界史・地理・政治経済・現代社会・倫理の教科書や参考書に記されている「歴史的事実」をただひたすらに理解し、暗記してきただろう。そのため、大学で学ぶ歴史学に関しても、「歴史的事実」の理解・暗記が必須になると考えている者も多いのではないか。
 しかし、実際はそうではない。歴史学とは本来、特定の「歴史的事実」をただ受動的に暗記するだけの学問ではない。過去の人々が遺した種々の歴史資料をもとに、さまざまな知見(社会学・政治学・経済学など)や自らの想像力を駆使して、過去を積極的に復元しようとするものである。それゆえ、諸君は2年時より「史籍講読」や「実習」を通じてさまざまな歴史資料に触れ、それらを読解する方法を学んでいるのである。大学で学ぶ歴史学とは、「無心で暗記する」学問ではなく、「歴史資料を前にしてひたすら考察する」学問と言える。歴史教科書や参考書に記された「歴史的事実」がどのような歴史資料に基づいて復元されたのか、またその過程でいかなる問題が生じ、どのような議論が繰り広げられたのか。これらを知ることは、現代社会が抱えているさまざまな課題や問題点を克服する上でも大いに参考になろう。
 本講義では、そのような本来の歴史学の方法論について、実例をもとに考えていきたい。後期は歴史資料の扱い方を中心に取り上げることで、実際に「歴史的事実」を復元するに際して生じる問題点について考察してもらう予定である。

授業の到達目標

・個々の歴史的事象がどのような資料に基づいて復元され、その過程でいかなる問題点が生じるのか、それらのプロセスを理解する。
・個々の歴史的事象が内包するさまざまな問題点に基づいて現代社会の課題・問題点について考察し、自分の意見を述べることができる。

成績評価の方法および基準

・確認テスト・コメントペーパー40%
・中間レポート30%
・期末レポート30%

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書特になし
参考文献必要に応じて授業中に紹介する

準備学修の内容

・授業終了後、配布プリントなどを見直し、授業内容の概要について振り返るクセをつけておくこと。

その他履修上の注意事項

・私語など、他の受講者の迷惑になるような行為は控えること。
・授業内容をただ鵜呑みにするのではなく、その中から積極的に疑問点や問題点を探し出すように努めること。

授業内容

授業内容
第1回ガイダンス
第2回文字から歴史を読み解く――歴史書・注釈・メディアについて
第3回モノから歴史を読み解く——満城漢墓に埋葬された「ハダカの王様」と夏王朝
第4回「国士無双」韓信の憂鬱――背水の陣に関する史料を徹底的に読み込む
第5回白起はなぜ敵兵40万人を生き埋めにしたのか――複数の史料を使って長平の戦いを復元する
第6回長城を守る兵士たちの「日常」――木簡を用いた社会史研究の一例
第7回論文を読んでみよう
第8回中間レポート出題およびレポート作成指導
第9回インターネットを使って歴史学してみる——歴史ブログのソースを精査する
第10回怨念を込める司馬遷と王朝を賛美する班固——『史記』と『漢書』を比較する
第11回曹操・劉備・孫権の「正義」――『三国志』の編纂意図をめぐって
第12回ホロコースト否定論——歴史修正主義1
第13回南京事件をめぐって――歴史修正主義2
第14回モンゴル帝国の滅亡とデカメロンとメメント・モリとニュートン——グローバルヒストリーとは
第15回総括 ※オンライン