少年非行の要因
担当者岡本 潤子教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [心理学科 2017年度以前]
科目ナンバリングSOP-306

授業の概要(ねらい)

 本授業では,犯罪・非行について,また,家事事件について,基本的な制度を理解し,心理学が果たしている役割を学びます。犯罪・非行行動に対しては,法律の決まりがあり,粛々と手続きが流れていくかのように思えます。しかし,法律だけでは,人間の行動である犯罪や非行を,十分に理解することも,必要な支援をすることもできません。心理学の知恵は,法律が人を扱うときにできる隙間を埋め,犯罪者と被害者,また,その双方を含む社会の立直りを実現するために役に立っているのです。また,民事事件の分野では,特に家庭の問題を扱う家事事件において,心理学の果たす役割が大きくなります。行為能力に欠ける人の保護や支援,親の離婚を経験する子どもの福祉,親族の争いごとなどを扱う分野です。
 2022年4月は,少年法の大きな「改正」が施行されます。また,家事事件の分野の法律も,親権と懲戒権,嫡出推定など,改訂の論議が現在進行中です。この授業が,法律の背景に何があるのか,人々の心に起きていることがらを考える機会になるよう,話題提供していきたいと思っています。
 公認心理師試験における「司法・犯罪に関する心理学」の領域に対応する内容を扱うので,授業はやや網羅的になります。大教室での講義授業ですが,知識を深めるだけでなく,社会人であり,有権者であり,成人である皆さんが,授業の中で考える時間を大切にしたいと思います。興味に流れやすいトピックですが,真剣に取り組んで学んでみましょう。

授業の到達目標

① 犯罪,少年非行の制度や機関について,仕組みや活動倫理を説明できる。
② 犯罪,少年非行の要因の理論について説明できる。
③ 犯罪,少年非行の立直り支援の仕組みについて説明できる。
④ 犯罪被害者への支援の制度や理念について説明できる。
⑤ 家事事件の制度や,家事事件における子どもの福祉がどのように扱われているかについて説明できる。

成績評価の方法および基準

 試験の成績(75%)と,授業参加状況(25%)を総合して評価します。授業参加状況とは,カードリーダーによる各授業の出欠席登録数ではなく,授業内で不定期に実施する振り返りシート(リアクションペーパー)の提出状況とその内容の評価のことを指します。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書 テキストは指定せず,毎回,授業のレジュメを配布します。
参考文献『犯罪心理学』 バートル&バートル北大路書房
参考文献『犯罪心理学事典』 日本犯罪心理学会丸善出版
参考文献『子どもと家族の法と臨床』 廣井亮一,中川利彦金剛出版
参考文献『司法・犯罪心理学』 門本泉(編著)ミネルヴァ書房
参考文献『コンパクト司法・犯罪心理学』 河野荘子・岡本英生(編著)北大路書房

準備学修の内容

 授業で紹介する書物,新聞,専門誌,インターネットのサイトなどを興味を持って読み,関心を広げてください。
 配布する授業のレジュメは,テストに持ち込む大切な資料になるので,授業ごとに確認・整理し,授業時持参するようにしてください。

その他履修上の注意事項

 ① 配布するレジュメは概要なので,講義により細部を充実させ,内容を理解することが必要です。
 ② 知識を得るだけではなく,犯罪・非行,また,家事事件に対する自分の立ち位置を振り返る姿勢を持ってください。
 ③ 大教室の授業です。授業中は,私語や,他の学生の迷惑になる行為は慎んでください。
 ④ 心理学の研究調査への協力を呼び掛けることがあります。研究への参加体験としてご協力ください。
 ⑤ <重要>教室の大きさにあわせ,受講者数を制限する可能性があります。

※ 2018年度以降の入学生には、公認心理師受験資格に必要な科目です。
 2017年度以前の入学生は、心理学科のホームページを参照してください。

授業内容

授業内容
第1回イントロダクション。犯罪・少年非行についての定義等。
 
第2回日本における犯罪・非行の現状。犯罪・非行事件の手続きの流れ。各法律および関係機関の役割
第3回少年事件に関わる各機関の働きと心理職
第4回犯罪理論の発展の歴史。犯罪・非行の要因 ① (生物学的な要因論)
第5回犯罪・非行の要因 ② (心理学的な要因論)
第6回犯罪・非行の要因 ③ (社会心理学的な要因論)
第7回犯罪・非行の要因 ④ (アセスメントからの視点。犯罪と環境)
第8回非行の要因論を事例で理解する。(架空事例を使って) (LMS オンデマンド)
第9回犯罪・非行からの立直り,修復的司法
第10回家事事件の扱うことがら。手続きの流れ
第11回離婚を取り巻く状況
第12回離婚と子どもの福祉 ①(親の離婚と子どもに関わる制度)
第13回離婚と子どもの福祉 ②(子どもの受ける心理的影響と支援)
第14回家事事件にあらわれる児童虐待
第15回テストとまとめ