担当者 | 山下 雅之教員紹介 | |
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単位・開講先 | 選択 2単位 [総合基礎科目] | |
科目ナンバリング | SOC-101 |
この授業では、世界に共通する文化現象であるマンガを通して、それぞれの社会の違いと互いの共通点を探る。とくに20世紀以降のグローバルな社会変化の中で、マンガがそれぞれの国や地域において果たしてきた役割を考えながら、その社会的な意味を理解する。
20世紀におけるマンガの変遷と、その背後にある社会の変化を通して、文化的な表象の果たす役割について理解し、同時に各地域におけるマンガの特徴から、その文化的特殊性を理解する。
科目の修得目標としては
人文科学、社会科学、自然科学の幅広い観点から現代社会を分析する視点を持つことができる、
を掲げているので、これに沿った内容を目標とする。
中間レポート20%と期末試験70%及び授業への積極的な参加10%を基準として評価する。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | フランスのマンガ | 山下雅之 | 論創社 |
参考文献 | タンタンのやさしくて不思議な冒険 | 山下雅之 | 論創社 |
日本や海外のマンガ、アニメ作品についてそれぞれの特徴を理解するため自主的に鑑賞、比較することが望ましい。
回 | 授業内容 |
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第1回 | 世界のマンガの発展と各地域の特徴 日本ではマンガやアニメ、ゲームといったものがあちこちにあふれており、社会的に見てこれらの文化的領域の敷居が低い。つまりだれにでも簡単にアクセスできるものとして、日常に接している。とくに子供時代から多くのキャラクターやイベントに囲まれており、生活の一部がアニメやマンガやゲームのキャラでできていると言っても過言ではない。子供のころ接していたテレビ番組や雑誌やゲームはどのようなものか、思い出して調べて下さい。ゼミの中で発表してもらいます。 |
第2回 | 日本のマンガとヨーロッパ 日本のマンガやアニメは1980年代からヨーロッパに輸出されるようになり、フランスでも多くの子供たちが日常的に日本のアニメ番組を見るようになりました。とくにフランスでは週末だけでなく水曜日が学校休みという制度をとっているため、水曜朝に日本のアニメを見せる子供向け番組が定着しました。 そこで放送されていたのがドラゴンボールやセーラムーン、そしてらんま1/2などの当時の高橋留美子の作品でした。これにより日本のアニメが世界の子供たちに共有されるということが当たり前となり、いま私たちがアメリカ製の映画を見て世界中で感動しているというようなことが、子供の世界で生じたと考えられます。 しかし一方では、ドラゴンボールを見るとわかるように、日本のアニメが戦闘シーンを多く取り入れていて、これが暴力的である、子供の教育に良くないといった世論が生まれました。さらにこうした日本アニメに影響を受けた世代が10年後あるいは20年後にわたって、日本のマンガアニメを参考にした新しい作品、それまでのヨーロッパで見られなかったような作品を生み出すようになっていきました。 ドラゴンボール、セーラムーン、らんま1/2などのアニメをみて、内容を理解し、感想をまとめて下さい。授業でのプレゼンを期待します。 |
第3回 | フランス・ベルギーでのマンガの発展 ヨーロッパでは最初にベルギーで、現代的なマンガが発展したと考えられ、その時期は日本よりも早い。その始まりは少年マンガで、1920年代から30年代にかけて始まった冒険マンガ「タンタン」である。そしてすぐに少年マンガ雑誌が生まれ、ギャグマンガから歴史ものまで、多くのジャンルが次々と発展した。 『タンタンの冒険』はどのようなシリーズか予習して下さい。また作者についても、どのような経歴の人物か、調べて下さい。 |
第4回 | ヨーロッパのイラスト文化 ヨーロッパでマンガが生まれた素地を提供したと考えられるのが19世紀に発展したイラスト文化である。写真ができたのは19世紀末だったが、それが印刷物に使われるようになり、新聞の紙面を飾るようになるのは第1次世界大戦のころで、それまではニュース写真がないため、新聞記事でさえイラストを使っていた。 このほかのジャンルとしては小説の挿絵がある。またファション雑誌の写真もイラストを使っていた。 実際にどのようなイラストが使われていたか、当時の新聞や雑誌から調べて下さい。日本では明治から昭和の初めにかけてがほぼこの時代に当てはまるので、明治・大正・昭和はじめまでの雑誌や新聞から画像を探して下さい。 |
第5回 | ピエニクレやベカシーヌ フランスでは19世紀末から20世紀初めにかけて、現代風の少年マンガ以前に、より伝統的なスタイルをもった風刺的要素を含むマンガが作られていた。その草分けともいえるのが『ピエニクレ』であるが、その意味は「無精者」、つまりサボって何もしない連中という意味・・・3人組のおじさんたちが金持ちをだましてお金を巻き上げる・・・というような話である。またベカシーヌは田舎から出てきた少女が都会で働きながら、いろんな珍しいものに感動したり、失敗したりしながら成長していくといった話。当時の社会や時代を反映した内容となっている。これについては海外のサイトで画像を検索して探してみて下さい。 |
第6回 | 少女雑誌と少年雑誌 当時から子供向けの雑誌は少年と少女に分かれていて、少年用には冒険や科学などの記事が少なからず掲載されていた。また少女の向けには家庭的な人間関係を題材にした物語だったり、裁縫や雑貨づくりなどの季節に応じたいろいろな手作りの提案などが掲載されていた。現代ではジェンダーフリーが意識されるようになってきたが、20世紀半ごろまでは男の子と女の子とは別の世界として描かれていたことがわかる。現在の少年マンガと少女マンガを用いて、ジェンダーの違いがどのように描かれているか、調べて下さい。 |
第7回 | 風刺イラストと政治問題 フランスに限りませんが、欧米のマンガの特徴の一つは、風刺画という強烈なジャンルがあることです。日本でも新聞にはかつて風刺画が載っているのが一般的だった時期がありました。おそらく新聞というメディアが欧米からの影響を受ける中で設立され、その紙面の中に政治家や事件に対する風刺の精神が盛り込まれていたのだと思います。ところがいまでは、説明のために使われるイラストが少しあるものの、政治家の顔を意地悪そうな顔にゆがめて描いたりするような伝統は、日本にはありません。フランスでは有力な新聞であるルモンドを始めとして、大統領などが今日のニュースでどんな顔をして何をしゃべったイラストが出ているかはとても大きな楽しみです。そしてマンガ雑誌の中にはこう言った社会や政治の風刺をメインに据えたものが存在し、そのあまりの強烈さに社会問題が沸き起こるほどの緊張感があるのです。その代表格ともいえるのがシャーリー・エブドですね。日本やアメリカ、ヨーロッパでの風刺画としてはどのような絵があるか、画像を検索して調べて 下さい。日本だとポンチ絵と言われた明治のころの風刺画が有名かもしれません。風刺の精神というのは新聞雑誌に限りません。チャプリンの『独裁者』はご存知でしょうか。腕章をつけた軍服姿のヒゲの男性、おわかりですね。有名な政治家がドジでへまなキャラを通して、その問題性を暴露します。この映画を見て紹介して下さい。 |
第8回 | 少年タンタンの冒険 そうした中で、1929年に始まったのが少年マンガ『タンタンの冒険』である。作者はエルジェ、プチ・ヴァンティエムという新聞に掲載された。どんなマンガなのか、読んでみて下さい。入手困難な場合はアニメを見てほしいです。Youtubeでほとんどの作品を見ることができます。ただし日本語になっていないかも知れません。このマンガの特徴は世界各地で事件が起きるので、タンタンがそこへ出かけていくというグローバルな展開にあります。マンガの内容や作者についてネット上で調べて下さい。 |
第9回 | 植民地主義とマンガの発展 タンタンの冒険が作られた当時は、第2次大戦前の時期で、欧米各国が世界に植民地をもち、覇権を競うという状況下にあった。日本もそうした植民地主義政策に参入し、アジアにお行ける自国の地位を高めるべく海外支出を加速させようとしていた時期に当たる。マンガの中ではベルギーやイギリス、フランスなどの国々がそれぞれの植民地となる地域でいかなる政策を展開していたのかが背景となっている様子がうかがえる。タンタンの「コンゴ探検」や「青い蓮」あるいは「かけた耳」を読んで、以上のような観点から、何がどう描かれているのかを考えてみてください。またこれまでに習った世界史の授業内容から、20世紀初めの欧米による植民地政策がどのようなものだったかをまとめておき、発表して下さい。 |
第10回 | インド、中国、アフリカ、南米のイメージの変化 タンタンは世界を冒険するマンガとなっているが、当時は植民地主義の結果として、自国の領土が欧州やアジアの限られた区域にとどまらず、いわば地球の反対側にまで版図が広がった時代でもあった。実際にタンタンの中にはコンゴやインドそして中国のいくつかの地域が描かれている。それらは現在の私たちが目にする町や村や森の様子とはどのような点で異なっているか、マンガやアニメを見て予習してみて下さい。また世界史の知識からアフリカ中国やインドが当時どのように植民地化されていたのか、学習をおこなって下さい。 |
第11回 | スピルーの誕生とマンガ文化 タンタンから始まった少年マンガですが、すぐにマンガの雑誌がベルギーで生まれました。これがスピルーです。その後スピルーではガストンをはじめ、いろいろな人気マンガが生まれて行ったが、とくにそのマンガのカラーはギャグということで、まじめに事件を解決するというよりも、どこがふざけて調子に乗ったキャラが目立っているところである。雑誌のタイトルとなっている作品スピルーもそうだが、これらのキャラを生んだマンガ家というとフランカンである。どんな作品やキャラクターが作られたか、画像を調べて見て下さい。 |
第12回 | エドガー・ジャコブの描く精緻なマンガ ベルギーで始まったヨーロッパの少年マンガですが、スピルーに加えてさらにもう一つマンガ雑誌が創刊されました。それが『タンタン』ですが、こちらは作品名でなく、雑誌の名前です。この雑誌では歴史もの、パイロットの空中戦、自動車レースなど、多様な世界が細かく描かれた本格的な作品がいくつも現れました。 その中でとくにクオリティーの高さから異彩を放ったのがエドガー・ジャコブの描いた『ブレイクともディマー』でした。これについては難しいかも知れませんが、画像など探して下さい。詳しいことは授業で説明します。 |
第13回 | SFの発達:ジュール・ヴェルヌとH.G.ウェルズ 現代の日本ではガンダムをはじめとして宇宙やロボットが登場するマンガやアニメはごく普通のものですが、そうした空想の世界が描かれるようになったのは19世紀末から20世紀初めにかけての時代でした。しかも最初は小説として登場したものだったのです。このような内容の作品をSFといいます。そしてヴェルヌやウェルズがその創始者とされます。どんな経歴や作品があるか、そして主な作品についてぜひ読んでおいて下さい。プレゼンをおこなってもらうつもりです。 |
第14回 | タンタンから発展するマンガ雑誌 じゃこぶのところでも書きましたが、ベルギーやフランスの少年マンガ雑誌を代表するといえば「スピルー」と「タンタン」の二つでした。時代とともに掲載された作品には変化がみられますが、それぞれが多くの人気マンガを作り出しました。どんなものがあるか画像で探して見て下さい。「ヨーコ・ツノ」もその中に入ります。 |
第15回 | 少年マンガの全盛期 以上で紹介してきたような少年マンガがベースとなって、その後は成人向けのマンガへと広がっていくことになりますが、基本的には冒険や宇宙、西部劇やローマ時代、自動車レースから空を駆け巡るパイロット、そして海賊や騎士など、どれも興味深い個性的な世界を描くことで多くの作品が作られて来たといえます。日本の戦後の少年マンガとの比較はとても重要ですね。 |