人的資源管理
担当者鈴木 智弘教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [総合データ応用プログラム 総合データ応用プログラム]
科目ナンバリング

授業の概要(ねらい)

 経済・社会活動がグローバル化し、Globalな企業間競争が激化し、日本企業は大きな事業革新を求められている。更に、人口高齢化と人口減少の進行は、日本企業の人的資源の担い手を大きく変えつつある。本授業は、日本企業が進めている人的資源管理の取り組みとその背景、および取り組みがもたらす影響について理解し、今後のあり方について検討を行うための視点を身につけることを目的とする。
 組織目標達成のための人事システムを構築するためには、定量的な視点と、定性的な視点の両面が必要になる。前者は、厳密なデータ分析、後者は、歴史的・文化的な議論が必要になる。
 受講生が、自ら上記の二つの視点を融合して、日本企業の人的資源管理におけるデータを収集・整理・分析し、得られた結果を専門的見地から解説できるようになることを狙いとする(DP2に該当)。
 本授業は、原則としてオンライン授業(リアルタイム配信型)として、実施する。高度専門職業人養成を目的としているため、一定期間(概ね5年以上)の就業経験のない受講生には、表層的ではなく人的資源管理を理解することは難しく、「5. 準備学修の内容」に記載しているとおり、多くの事前学習を必要とするので、そのことを覚悟して履修すること。

授業の到達目標

1.日本企業の人的資源管理について、俗説ではなく、データや歴史的経緯を踏まえた説明ができるようになること。
2.人的資源管理論を、経営戦略の中に位置付けて考えられるようになること。

成績評価の方法および基準

毎回の授業での課題発表(テキストクリティック)の内容(50%)と、期末試験(50%)

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献新しい人事労務管理(第6版)佐藤博樹、藤村博之、八代充史有斐閣
参考文献人的資源管理論~理論と制度(第3版)八代充史中央経済社
参考文献日本の人事を科学する―因果推論に基づくデータ活用大湾秀雄日本経済新聞出版本部

準備学修の内容

 この大学院は、高度専門職業人養成を目的としているが、専門職大学院ではなく、従来の学術研究を中心にした修士課程となる。従来型学位、専門職学位に関わらず大学院では、主体的に学ぶことが求められ、漠然と「経営の知識を身につけたい」と受動的に受講するのではなく、自ら問題意識と仮説を持って、主体的に「研究」することが求められる。
 この講義では、毎回、教員が指定する学術論文(英文も含む)などを読み、レポートを作成することが必要である。レポートは、単に文献を要約するのではなく、テキストクリティック(文献を批判的に読むこと)することを求める。文献批判するためには、そのテーマに関して、当該論文以外の論文を探し、対比させ、自分の見解を記述することが必要になる。そのため、1回の授業に参加するためには、多くの予習と復習が必要になる。また、上記、参考書は、最低限の知識を自学するためのものであり、教員が解説することはない。

その他履修上の注意事項

 大学での学びには、性別、国籍、社会人であるのか等、個人属性は関係なく、平等である。そのため、仕事が忙しい、日本語が分からないなどの理由は、同情するが、授業では一切勘案しない。個人的な理由で、課題を提出しない、不十分な状態で授業に参加することは認めない。当然のことであるが、大学院課程なので、学部レベルの経営学や統計学の基本知識は習得済みとして授業を行う。初回授業で、経営学の基礎知識に関する小テストを実施する。基礎知識の不十分な学生は、基礎知識を付けてから(次年度に)受講することを強く勧めることになる。
 また、担当教員は、戦略経営の専門研究者であり、データサイエンスの専門家ではないので、データサイエンスに特化した人的資源管理の授業ではないことを了承して欲しい。このコースの授業は、原則としてリモート授業になる。

授業内容

授業内容
第1回イントロダクション
授業の目的、取り上げるテーマ、進め方についての説明、経営学の基礎知識に関する小テスト
第2回日本企業の人的資源管理をめぐるトピックについて、受講生から自らの問題意識提起
第3回これからのHRMに影響を与える変化の要因の整理:少子化、高齢化、人口減少、就業構造の変化(1)
受講者が日本政府の労働関連統計から必要なデータをpick upし、図表にして、説明し、このことが、日本企業の経営に、どのような影響を与えるのか自説を発表し、討議する。受講者が1名若しくは2名程度でディスカッションが成立しない場合は、発表内容に対する教員の諮問に答える(以下、全ての授業に共通)。
第4回これからのHRMに影響を与える変化の要因の整理:少子化、高齢化、人口減少、就業構造の変化(2)
受講者が日本政府の労働関連統計から必要なデータをpick upし、図表にして、説明し、このことが、日本企業の経営に、どのような影響を与えるのか自説を発表し、討議する。
第5回これからのHRMに影響を与える変化の要因の整理:少子化、高齢化、人口減少、就業構造の変化(3)
受講者が日本政府の労働関連統計から必要なデータをpick upし、図表にして、説明し、このことが、日本企業の経営に、どのような影響を与えるのか自説を発表し、討議する。
第6回3回〜5回までの授業で受講生が確認した事実に基づき、日本企業の人事管理に与える影響について受講者が発表し、討議する(1)
第7回3回〜5回までの授業で受講生が確認した事実に基づき、日本企業の人事管理に与える影響について受講者が発表し、討議する(2)
第8回日本企業の人的資源管理における課題①「日本企業の人材確保(make/buy/borrow)と「ジョブ型」「キャリア自律」」について、データと歴史的経緯について受講生の発表に基づき議論する。

想定されるテーマとKeyword:新卒一括採用、中途採用(経験者採用)、小池和男の「熟練」「キャリア」概念、職務給/職能資格給、年功賃金、ジョブ型雇用/メンバーシップ型雇用、エンプロイヤビリティ、キャリア自律・自律型キャリア
第9回日本企業の人的資源管理における課題②「日本企業の人材確保(make/buy/borrow)と「ジョブ型」「キャリア自律」」について、データと歴史的経緯について受講生の発表に基づき議論する。

想定されるテーマとKeyword:新卒一括採用、中途採用(経験者採用)、小池和男の「熟練」「キャリア」概念、職務給/職能資格給、年功賃金、ジョブ型雇用/メンバーシップ型雇用、エンプロイヤビリティ、キャリア自律・自律型キャリア
第10回日本企業の人的資源管理における課題③「日本企業の人材確保(make/buy/borrow)と「ジョブ型」「キャリア自律」」について、受講生の発表に基づき議論する。

想定されるテーマとKeyword:日本企業の人材確保のあり方・キャリア自律
第11回日本企業の人的資源管理における課題④「能力開発・キャリア形成と人的資源管理」について、受講生の発表に基づき議論する。

想定されるテーマとKeyword:遅い昇進/長期の競争、人事権、異動の範囲、転勤とキャリア形成、ファスト・トラック、キャリア形成支援/キャリア・カウンセリング、キャリア再起、「妊活」支援
第12回日本企業の人的資源管理における課題⑤「多様な雇用・就業形態のマネジメント」について受講生の発表に基づき議論する。

想定されるテーマとKeyword:雇用Portfolio
第13回日本企業の人的資源管理における課題⑩「多様な就業のあり方と人的資源管理~マルチプル・ジョブの活用とリモートワーク」について、受講生の発表に基づき議論する。
第14回人的資源管理の基本知識について口頭試問
第15回グローバル競争下での日本企業の今後について、受講生の発表に基づき討議(講義の総まとめ)